大声二題

昼下がり、桜田門の近くを歩いていると、何やら朗々たる人の声が聞こえてきた。
街宣車か、演説会かと周りを見回すがその気配もない。
ふと信号待ちをしている車列を見ると、原付バイクに乗った三十代の、スーツを来てヘルメットをかぶった、パラダイス山本を二倍膨らましたような男性。


「トーヨー○○工業の、女性社員のことを、トーヨーの魔女、といいまーすぅ。」


ものすっごく通る低音の声で、信号待ちの間中叫んで、いや、唄っていた。


…なぜ?


帰り道。地下鉄のエスカレーターは今日から三日間工事中。
帰りは下りだからいいが、朝は階段のぼるのか…
と、憂鬱になっていると、どこからか朗々たる声が聞こえてくる。例えるならば、宝塚の男役が歌い上げるときのような…


「本日より、エスカレーター工事のため、階段をご利用いただけますよう、お願い申し上げます〜」


見れば、ガードマンの制服を着た「ひょろりとしたのび太」みたいな二十歳くらいの男性が叫んで、いや、唄っていた。


いい声ブーム?