ひとつだけ気になること

本人の意思と言うことである以上、今はソロ活動頑張れとしかいいようがない。ホントは続けたいのに事務所が無理やり、などという憶測は、本人が発言しない限り無意味だし、何が変わるわけでもないのだから。
ただ一点気になるのは、「本人も反省している」からソロ活動をさせる、と事務所の発表にある点だ。
今回の出来事、二十二の女性が反省しなきゃいけないようなことを何かしたか?好きな男の家に遊びにいくことは、21世紀の日本においてそれほどに非道徳なことであろうか。ましてや矢口側では家族公認だったという。
ここで過去の事例を振り返ってみよう。例えば石黒彩は卒業直後に結婚し、事務所を離れている。安倍なつみは盗作騒動で謹慎したもののコンサートで復帰した。松浦亜弥も男性関係に噂が立ったが特におとがめはなかった。それに比べると今回の会見なし・ファンへの直接の挨拶なしで脱退という結末は随分と唐突に見える。
事務所としてもメンバーの卒業はモー娘。コンサートの売りであり、商売を考えれば本人が拒否してもやらせるくらいのもののはずである。それなのに何故こんな結論にした(ないしは認めた)のだろうか。


ここから見えてくるのはモー娘。に対する「恋愛ざただけは厳禁」という事務所の姿勢である。「恋愛」は松浦は許されてもモー娘。メンバーである矢口には許されず、盗作と同様に反省が求められる行為だと言うことだ。石黒の場合も公式な理由は「デザイナーを目指す」ということだった。
小泉今日子以降のアイドルの状況を考えると時代錯誤とも言えるこうした事務所の態度は、どこに向けてのアピールなのかを考えると分かりやすい。ラブマシーン以降急速に進んだファンの低年齢化は、ミニモニで完全に定着し、CDセールス以外の版権収入を事務所にもたらしていることは想像に堅くない。CD不況の今現実に「モー娘。ビジネス」を支えているのは子供であると同時にその財布である親であって、ラブマシーンまでを支えたアイドルオタクたちではないのだ。
幼い子供がファンであることを親に許させるため、過剰なまでの「清潔さ」を求めた結果が今回の決定につながったのではないか、というのが筆者の仮説である。環境に関するキャラクターをメンバーが担当するなど、公的機関のキャンペーンに積極的なのも、ファミリー層への浸透を計るこうした動きと無関係ではないと思われる。
こうしてファミリー層を重視し、異性よりも同性の支持を受け、スキャンダルを決して起こさず、公的機関のキャンペーンに多用され、メンバーが入れ替わることで集団としての鮮度を保つ。そんな「モー娘。」の最終形はすでにこの国に存在する。そう、宝塚である。
モー娘。の宝塚化」については、「Mr.moonlight」の頃から指摘されていた。それは単にメインボーカルが男装していた、という点だけではなく、安倍・後藤のツートップ頼りから、「誰がメインとなるか」をこれ以降話題作りに使うようになった点による。これによりメンバーに入れ替わりがあっても「モー娘。」という枠組みを残して活性化が計れるからだ。ちょうど宝塚がトップスターの退団と新スターの登場によって活性化されるように。
これはシングル曲のヒット頼みという不安定な状況からモー娘。を永続的なビジネスへと変換させる取組みであり、経営判断として理解できる部分もある。そして今回の過剰防衛とも映る結論も、こうした流れの中で出されたと考える事が出来る。


では納得が行くのかと言われれば、しかし、モーヲタとしては小首を傾げざるを得ない。果たして宝塚化したモー娘。に魅力はあるのか?
デビュー当時のモー娘。を「敗者復活の魅力」と評したのは中森明夫だったかと思うが、従来のアイドルが「街でスカウト」や「友達が勝手に応募」など「消極性」を売りにしていたところに「オーディション」という積極性を持ち込んだのがASAYANであり、ましてやそこでも落ちた5人がモー娘。の始まりである(そしてその経緯をすべて試聴者が知っている)ことを考えれば、敗者としての影とそれでも芸能の世界で生きていこうとする貪欲さが彼女たちの魅力の一つだったことは異論の余地がないだろう。
しかし、矢口の脱退により、ついにラブマシーン以降に加入したメンバーのみとなったことは、やはりこの集団が一つの曲がり角を迎えていることを示している。
ラブマシーンは、シングル同日発売対決で鈴木亜美に完敗した後―つまり大きな敗北をした後―に生まれた最大のヒット曲で、ファン層を拡げ、トップアイドルの地位を確立した曲で、これ以降モー娘。への加入は勝者の一員になることを意味するものに変換した。つまり現在のメンバーは、もちろん彼女たちのせいではないが、敗者としての魅力を持たない、当初のモー娘。とは異質の集団となったといえよう。
当初からの魅力の一つを失ったモー娘。。もちろん矢口の脱退はもはや既定路線ではあったろう。しかし、宝塚化(勝者の集団化、とも言える)路線が決して安定軌道に乗っているとは言えない現状では、まだ旧来型の売上が必要であり、モーヲタ―敗者としての彼女たちを愛するもの―たちが必要でもある。
CDセールスが落ち込む中、加入当初から新旧メンバーの橋渡し役を行ってきた矢口を、そもそものモー娘。の香りを持ち続けている矢口を、今の時点で集団から失う事に本当にメリットがあるのか?今後モー娘。が続いていくためのベストの判断なのか?性急に次の段階を求めすぎてはいないか?今はただ、この不安が杞憂に終わる事を祈るのみだ。









半年ぶりの更新が、矢口真里脱退問題でいいのだろうか・・・
あと二ヶ月足らずで人の親なのに・・・