バーバパパ

僕のカバンにはバーバパパがいます。
手のひらサイズのマスコットで、なんとも触り心地がいい。
で、その日も電車の座席で感触を楽しんでいるうちに、すっかり眠ってました。
ターミナル駅で隣の女性が降りた事で目を覚ますと、そのまた隣に座っていたカップルがあっと声をあげました。
「今の人のだよねぇ」「んー、気付かないで行っちゃったみたいだなぁ」
ふとその女性が座っていた席をみると、そこにはバーバパパが。
どうやらチェーンが外れて僕のかばんから落ちてしまったようです。いかんいかん、といそいそと拾いあげ、カバンに付け直していると、
隣からいたく視線を感じる…
(何こいつ、人の忘れ物自分のにしようとしてる)(しかもバーバパパだぜ、欲しけりゃ買えよ)(っていうかオヤジが付けるか普通)(うわ、きっしょーい)
い、いや違うんだよ、これはそもそも僕のものでそれゆえ僕の行為は正当だし、それにバーバパパがどうこうでなく触感を僕は楽しんでるんであって、ま確かにちょと若作りしようという魂胆があることを完全に否定するものではないが主眼はそこではなくて…


と心の中で言い訳しつつする狸寝入りは、辛かった。