乗換えに使う地下鉄の駅で

帰りに通ると、建物に直結する階段にいつも座り込んでいる男性がいる。
50代くらい、細身で少しだけくたびれたスーツを来て。
足下にはチューハイの缶。帰りを急ぐ人達に背を向けて、うつむいて膝を抱えている。毎日。


別の乗換え駅では、車いすにあるだけの衣服を着込んで、やはり人々に背を向けるように壁に向かって目を閉じる人を見掛けた。
閉店後の店の軒下に、せっせと寝場所をつくるおばさんを見たこともある。


胸が締め付けられても、僕には何もできない。


経済的な意味でなくても、例えば声を掛けるにしても、毎日、彼らがそこからいなくなるまで毎日声を掛けるのでなければ何の意味もない。
福祉行政や失業対策を声高に批判したところで、目の前の悲しみになす術を僕は何一つ持たない。


だから、僕はその場を足早に通り過ぎる。


僕の思い過ごしであることを祈りながら。
彼らが一日に一度でも心から笑う瞬間があることを願いながら。
薄っぺらな僕を心底見下してくれていることを望みながら。


今日のおひるごはん情報
:鶏そぼろ丼セット(830円)