愛しくて恋しくて

夢路いとし師匠がご逝去されました。


80年ごろの漫才ブームでお笑いに目覚めて僕にとって、
それ以前からいた漫才はすべてまとめて古いもので、
誰をみても何をみても同じにしか見えず、
興味をそそられるものではありませんでした。


しかしそれからしばらく、漫才ブームを支えたコンビがほとんど消え、
あるいは漫才を捨てたころ、そして自分で人前に出始めた頃に
花王名人劇場か何かでたまたま見たいとしこいしの漫才
(今にして思えば名作「ジンギスカン」だったと思います)は、
そんな先入観を吹き飛ばすに充分な凄さでした。
茶の間でのた打ち回りながら笑いころげつつ、
ネタの面白さそのものだけで人を笑わせることは出来ないのだということ、
つまりは笑いの奥行きの深さを学んだのです。


近頃はやはりお年を召されたなぁとは思っていましたが、
それでもジンギスカンの作り方を聞くいとし師匠は
やっぱり可笑しくて、ずっと聞いていたいと思わせるものでした。


こいし師匠は通夜の後、予定通りひとりで舞台を勤めたそうです。
そんな芸人としての厳しい決意を秘めながら、
客席にはそんな厳しさを微塵も感じさせずにほのぼのとした爆笑で
包み込むあの漫才が見れないのは、やはり、悲しいなぁ。


今日のおひるごはん情報
:親子丼(680円)