一番こわいジェットコースター

あなたにとって今までで一番恐かったジェットコースターは何ですか?


スピードが速い?
落差が大きい?
連続ループがある?


確かにそれも恐いでしょうが、「あの」コースターにはかなわないでしょう。


そう、あれはもう10数年前。大学生になって初めての春でした。


大勢の友達と出向いた遊園地は、お世辞にも最新の設備が揃っているとは言えず、
いやむしろその「レトロさ」を売り物にしているところでした。


唯一のコースターは狭い園内をぐるりと一周するように作られている
20人乗り程度のやはり小さなもの。
特別速いスピードも落差もありませんが、古びたレールをがたがたと走る姿は
なんとも可愛らしく、小さな子供がお父さんにしがみつく様にして
乗っている姿は実にほのぼのとしていいものです。


定員の関係で、ちょうど僕の前でグループは二つに分かれることになりました。
「いってらっしゃーい」「じゃぁねー」
乗り込んだ仲間達に手を振ると、よいこらしょ、とでも言うかのように
ちいさなコースターは動き出しました。


春のうららかな日曜日。手をつないで歩くカップル。風船を手放してしまって泣いている子供。あそこでソフトクリームを買ってる二人は初デートかな?そうだ、僕にも彼女が出来たら一緒に遊びにこよう。そんな日が、早く来るといいなぁ。日だまりの中でそんなことを考えているとコースターがガタガタと音を立てながら帰って来て、


僕たちの目の前を駆け抜けていきました。


あれ?このコースター2周するんだっけ?いや、その前は1周だったよなぁ?あれ?


再び戻ってきたコースターが今度はホームに着くと
係員がバラバラっと顔色を変えて集まってきます。
コースターをあれこれ見たり、操作室のスイッチをいじったり。
30分ほど待たされたでしょうか、
「再開いたしますのでどうぞお乗りください」とひとりの係員が言いました。


小首をかしげながら。


僕らを乗せたコースターが無事1周で止まった時、
並んでいた人々から巻き起こった拍手を僕は忘れることが出来ません。


今日のおひるごはん情報
:ざるうどん