高校野球

夏のプータローには高校野球の地区予選が見られるという特典があります。


9回裏で同点となった延長戦が、10回には双方とも1アウトでランナーを
3塁まで進められながら凌ぎ切り、12回に表で1点挙げながら
その裏2点タイムリーが出てサヨナラという、マンガだったら出来すぎと
言われそうな試合を見ながら、僕たちの「最後の夏」を思い出していました。
とは言っても僕自身が高校球児だった訳ではありません。
僕はあくまで観客席から見ていただけの、高校3年の夏。


県大会ベスト8が目標の田舎の公立校。
2年ぶりにベスト16にたどり着き、遂にシード校との対戦。
いつもは深夜ラジオの話しかしないあいつも真面目な顔して
内野でボールを回しているし、
時代はずれのバンカラを気取っているあいつはスタンドの最前列で
もう声を嗄らし始めています。


初回に4点を取られた後、何度かのピンチをこらえ続け6回の裏に
一気に同点にしたのは「どーせサラリーマンになんだから、
就職率のいい大学いくからよぉ」と笑っているあいつのセーフティバント
きっかけでした。さあこれからと思った次の回、逆に満塁のピンチを迎えます。


貧打でここまでも苦しんだ我が高としてはここで再度リードを許すのは苦しい。
中学浪人をした19歳のあいつが守備固めにレフトへ走っていきます。
何度かタイムを取り合った後、ついさっき4点をもぎ取ったピッチャーが打席へ。
左打ちの彼がフルスイングした打球は、一塁側スタンドに陣取った
僕らの前を通りすぎ、外野席へ。


打球の行方を追っていたピッチャー・セカンド・ライトの3人が
その瞬間、同時にひざから崩れ落ちました。本当に同時に。


こうやって夏は終わるんだ、と思いました。


毎日たくさんの夏が終わっていくのを見物するのですから、
高校野球見物と言うのも随分残酷な趣味です。
でも、あんなにはっきりと夏を終わらせることが出来る人はごく僅かで、
世の中の多くの人は終わらない夏を抱えてうろうろして、それで羨ましくて
見ているのですから、どうか胸を張って夏を終わらせてほしいと思います。


今日のおひるごはん情報
冷やし中華(父謹製)